美しいテニス=無駄がなく 力強い
半年ぶりにIMG Academyにやってきた。自宅に戻ったような、40年前に初めて訪れた時のようなデジャブを感じた。
今回は、IMG Academy Discovery Open Tennis大会の参加に同行して、まぶしい太陽の光に満ちたテニスに打ち込むならこの環境というIMG Academyキャンパスに来た。
少しこの大会について説明しておこう。2015年にスタートしたこの大会は、将来、テニス界において活躍が期待されるジュニア選手の発掘のために開催されている。日本からは、第一回目の大会から、加古川市にあるTop Athlete Fellowshipが行う国内予選を通過した16.14.12歳以下の男女の選手が参加し続けている。毎年好成績を残し、2019年には全種目を日本チームが優勝している。今年は、コロナ禍で3年ぶりの大会が、8か国の代表選手を集めて5月1日よりスタートして週末には結果が報告される。今年のスケジュールは、午前中にレッスンがあり、午後から3セットマッチを毎日ラウンドロビン戦によって展開される。
大会の様子については報告⑵以降にお知らせするが、本報告⑴の内容は錦織圭プロのスパーリングに似たオンコートでの様子から始まる。
テニスを50年以上にわたって見てきた私を唸らせるショットの連続だ。唸らせるとは、美しさ・華麗さ・力強さ・スピード・パワーを身体にまとわせたショットの連続だ。そして、ぶれない。なぜか。私は思う。諸要素をまとわせる一球に対して、「ここに打ってほしい。このような種類を混ぜあわてほしい。といったショットを見せてくれるところにコアーなものがあるからだ。
まだまだ大会での活躍を期待したい錦織プロのテニスを見てほしい。
本大会の初日にIMG Academyは選手たちのためにバンケットを開催してくれた。招待を受けた参加国の選手たち、家族やコーチたち、Nick Bollettieriの知的レガシーであるIMG Academyのコーチたち、そして、錦織圭プロのゲストが出席したバンケットで、これからの日々の活躍をいやおうにも掻き立ててくれた。
トーナメントディレクターの司会で、まず、関係の言葉から始まり、IMG Academyテニスのディレクターで元世界5位のジミー・アリアス氏が大会の意義と成長期にある選手の皆さんにスピーチ、続いてダブルスで元世界1位・シングルス17位のマックス・ミレニィ氏、そして、世界最高位ランキング4位の錦織圭プロが続いてのスピーチがあった。
三名のスピーカーの要点は、
⑴ 皆さんの年齢にあるこの時期に世界が求める正しく美しいテニスを身に付けよう。
⑵ 日々の細かな努力を積み重ねよう。チャンピオンを目指すことも夢として大切だが、自分のトップを極めるのに10年以上の積み重ねが必要で、気が付くとツアーで輝くようになっていた。錦織プロの練習を見ていて、これだとあらためて気が付いた。ハイボレーの瞬間のネット際で両手の指先からつま先までピンとした瞬間をカメラの眼のように私は張り付けた。これは、今すぐに皆さんにできるものではない。積み重ねたトレーニングや世界のツアーで得た「自然の成果」だと思う。
⑶ そして、何よりもテニスは相手がいて成り立つもの。互いの友情を育む力が、相手をリスペクトでき、その反射としてリスペクトされる。IMG Academy Discovery Open Tennisのもう一つの大きな意義がここにある。 2023.5.1
Nick Bollettieri
1931-2022
伝説のテニスコーチであり、現在のIMGアカデミーの基礎となったニック・ボロテリー・テニスアカデミーの創設者であるニック・ボロテリー氏が2022年12月4日に旅立ちました。91歳であった。
ボロテリーは、1978年にニック・ボロテリー・テニスアカデミー(現IMGアカデミー)を設立し、世界で最も才能ある選手たちによる激しいフィジカルトレーニング、情熱を持つこと、戦い続けることに的を絞りました。。
史上最高のテニスコーチの一人と言われる彼は、その後、アンドレ・アガシ、ボリス・ベッカー、ジム・クーリエ、マリア・シャラポワ、ビーナス、セリーナ・ウィリアムズなど、10人の世界No.1プレーヤーのトレーニング、育成、指導に携わりました。
2014年、ボレッティエリは国際テニスの殿堂入りを果たした。2022年5月には、IMGアカデミー殿堂の最初の殿堂入りを果たしました。
2022.12.6IMG Academy In memory of Nick Bollettieri
2006年に来日し、大阪の靭テニスセンターで現在も開催されているスーパージュニアテニスにゲストコーチとして招いたときに、「こんなにたくさんのテニスに熱中するジュニアたちがいるんだ」と驚いていました。そして、その時、私達に励ましのメッセージをくれました。それは、『今、アカデミーには第二のアンドレ・アガシと呼べるほどの素晴らしい選手がいるんだ。彼の名前はKEI NISHIGORIだ。』と。コーチは神のような予言は出来ないが、テニスの神髄にコーチングをマッチさせたニックの言葉に世界の誰でもがときめきを覚えたに違いないと信じたいのです。
IMG Academy 30余年で得たこと
テクニック・フィジカル・メンタル・戦術/戦略・人としての成長
二年ぶりのIMGアカデミー。成田からダラスを経由してタンパ空港へ。そしてリムジンで50分のところBradentonにIMGアカデミーは威風堂々と表現できるほどの施設群を整然と並べている。訪れるたびに、森の中にいるような大気に包まれる。その匂いに懐かしいシーンが次々とやってくる。
初めて訪れたのは1987年。IMGアカデミーの前身となるNBTA/Nick Bollettieri Tennis Academyだった。その頃はモニカ・セレス選手がまだジュニア時代でトレーニングに励んでいた。
日々のプログラムではコート一面に生徒4名とし、効果的・効率的・合理的なメニューをレベルに応じてコーチングの内容がどのグループにも違いのない、つまり、科学的に裏付けられたトレーニングを展開している。それは、フィジカルトレーニングを重視していることからも感じられる。
そして、興味深かったプログラムがジム・レーヤー博士のメンタルタフネスだった。今日でこそメンタルの大切さを誰もが説くが、その最先端を見せてくれた。
テクニック・フィジカル・メンタルに加えてそれらをゲームの中でどのようなことを用いるのか、つまり、戦術であり戦略についてもプレー歴には関係なくコーチングする。
この「テクニック・フィジカル・メンタル・戦術と戦略」を柱にした"Bollettieri Way"が今日のIMGアカデミーの9種目のトレーニングのメインストリームとなり、革新的な解釈を重ねてIMGアカデミーは歴史を伝統を創り続けている。
アスレチック+アカデミックこそ人生を広げる
だから、どのスポーツにも優れたプロアスリートを輩出し、近時ではアメリカの大学への高い進学率を達成し続けている。このことは、生徒・家族・コーチ・教諭・スタッフが一体となったエネルギーの果実だ。このアイデアもNickが長く話していることだ。学業を大切にしまい進することは長い人生にあって多様な選択肢を生むんだと。人としての成長を祈りに似たように言う。
コーチングのコアは小さなことから大きな成果を生むことだ
私は、テニスの理論や方法論を学ぶために世界を歩き続けている。もう50年前の英国からスタートした。当時は、東欧のテニスの足音が高く響き始めた頃だった。
NBTAの前にはカルフォルニアのVIc Braden Tennis Collegeでトップスピン打法とバイオメカニックスを学んだ。ロサンゼルスオリンピック前でこの施設は科学データーを積み重ねていた。
スペイン、スエーデン、ベルギーにも多くの示唆を得た。
ついに私が膝を叩いたことを思い出させる言葉がある。それはNickの『些細かもしれないが、小さな指摘から大きな成果を生むことがコーチングなのだ』という鋭いメッセージだった。それは、経験が大切。なぜか。アスリートを注視してきた経験の中に現実と理想の間にあるズレを修正する経験だと。私は思う。このズレが科学的にも見て取れ、経験と科学を備えた力によりズレを正し、アスリートの至適なパフォーマンスを高めることに、「小さな指摘」は生きてくる。
どのコーチも明るい
キャンパスで出会うコーチはいつもと変わらず話しかけてくれる。そして、表情がみな明るい。なぜか。コーチ自らスポーツが好きで教えることが好きだけの理由ではい。
明るさを裏付ける何かがある。
なんだろう。そうだ、コーチは指導の仕方や生き方に自信があるからだと思う。
自信をもって接してくれるから生徒の心も分かってくれる。ConfidenceからBraveへ。
皆さんの自信はどのようにして高めますか?
IMGアカデミーに行けば見つけることができるかもしれません。2021.12